Blogs

ものぐさ記念対局自戦記:第1回

nyankomusume
| 14

 将棋界隈で話題沸騰となった電子書籍「ものぐさ将棋観戦ブログ集成」(以下「も集」という)が刊行されたのがさる8月3日。もう一ヶ月以上経ったんですね、早いですねー。9月19日現在で1,474ダウンロードという大ヒットとなっています。
 このダウンロード数というのはあくまでPDFまたはe-Pub版をダウンロードした場合の数字であって、実際にはにゃんこむすめのように必要な時にPC版(WEBで)で読む……というか何であれハードディスクを圧迫されるのは超イヤという(誤解を恐れずにいればハードディスク貧乏性な)人もかなりいるはずなので、実際に読んだ人の数、となると想像もつきません。元よりものぐさ氏と言えば将棋界の超有名ブロガーであり、このぐらいの反響はまぁ当然だな、ふっwという感じなのです。(注:このセリフはものぐささんが言ったのではありません)

 さて。チェスファンから見たこの電子書籍の最大の見所は、序文を
戎棋夷説さんが書かれていることです。戎棋夷説さんと言えばチェスファンなら知らぬ者はいない(はず)の、チェスブログ界の東西どっちかの横綱です。チェスブログの雄が何故将棋本の序文を?とかそういうツッコミはどうでもよくて、これはもう読むしかありません。未読のアナタ。ホラそこのアナタ!さぁ今すぐDLするんだ!読むのは年末ぐらいでもいいから!
 ちなみにこのも集。解説をにゃんこむすめの知人(あくまで知人であって友人でもなければ当人でもないし本人でもないんだよ?)チェスファンが書いています。
将棋ブログの本文を挟んで前後をチェスファンが書いているというよく判らないこのサンドイッチ状態にtwitterが結んだ不思議な人の縁を感じます。

 それはさておき。

 この本の出版を記念して、戎棋夷説さんとにゃんこむすめは「Monogusa_Memorial」と銘打った記念チェス対局を当サイトChess.comにて始めました。こちら12/08/10の記事にそのあたりの事情が書かれていたりしますのでご一読を。
 このゲーム、お盆休み前にCreateしましたので、お互いのスケジュールを考慮して「一手5日以内」という割と緩やかな通信対局としました。戎棋夷説さんは、も集序文執筆者の威信をかけて。にゃんこむすめは、も集解説執筆者の知人代表としての羽毛よりも軽いプライドの欠片をかけて。というか前回の対局で一度軽く捻られていたので今回はせめてドローに出来たらいいなぁ、なんて奥ゆかしい事を考えながら……2012年8月8日に、戦いの火ぶたが切って落とされたのでした。

ところでここから本題ですが。
この対局が始まる前、戎棋夷説さんはダニッシュ・ギャンビットの研究に勤しんでおられました。ブログによると二ヶ月に渡ってダニシュっておられます。ちなみににゃんこむすめはtwitter上で何度かダニッシュについて戎棋夷説さんとやりとりしています。

で「Monogusa_Memorial」で白番となったにゃんこは考えたわけです。

「この空気のさなかに、普段1.c4しか指さないにゃんこが1.e4と指せば、戎棋夷説師匠は当然、にゃんこの作戦はダニッシュだと思うよね?」と。

ダニッシュ・ギャンビットとは…

1.e4 e5
2.d4 exd4
3.c3 dxc3  

てな具合にオープニングからどんどかポーンを捨てて行く作戦です。

戎棋夷説さんはこのオープニングを深く研究され、そしてにゃんこときたらtwitterで「今度ダニッシュ・ギャンビット試してみますー」的に、素直な弟子を装った可愛いリプライを飛ばしたりしていたわけですね。いや実際素直にそう思ってはいたんですけれども。その時は。

………この流れを利用しない手はないな!腹黒)



ということでにゃんこむすめがものぐささんのために用意した秘策。それは!

1.e4   e5
2.Nf3  Nc6
3.d4    

……そう、これはスコッチ・オープニング!







現在レイティング世界1位のカールセン君が時々指してわりと勝ってる作戦です。ダニッシュとの違いは d4とポーンをぶつける前に一手Nf3を入れているところ。この1手が入るだけで途端にハメ手臭がなくなるところがミソです。いやダニッシュはハメ手じゃないんですけど。

えーと、つまり、1.e4で戎棋夷説さんに
やはりダニッシュか……バカめ。早指しならともかく持ち時間一手5日の通信対局で、しかもこの私にダニッシュなど通用するわけがなかろう!ゴゴゴゴゴゴ......(何故か悪の大王的なノリで)」と思わせた直後に 2.Nf3と指し、
「ふっ、2.Nf3とは!ルイ・ロペスか?……びびりおったな未熟者!」と油断させておき2..Nc6に対してそこで 3.d4といきなりぶつけることによって
「な、何ッ!ここで 3.d4だとッ!スコッチか!びっくりした!ちょっとスコッチ飲んで来るわー!」てな具合に意表を突いてしまおう、という深謀遠慮な作戦だったわけです。

このブログやtiwtterでにゃんこむすめを知る人がどういうイメージを持たれているか知りませんが、にゃんこむすめは作戦家というか下手は下手なりにあれこれと戦略をめぐらすのが大好きな猫なのです。今回もモーツアルトを聴きながら戎棋夷説さんの過去棋譜を並べ、ブログを読み、くすくすとほくそ笑みながら楽しく作戦を考えていたのでした。

何しろ 1.e4 e5 の後、chatで
「……やっぱり自信がないというか、せっかくのものぐさ記念対局なのでここは慎重にルイロペスで行きます」と言っておき
「まぁ、そうですよね。じっくり行きましょう」と答えながら2..Nc6と指す戎棋夷説師匠に向かって
ぬわーーーんちゃって!3.d4!スコッチでしたー」
という想定問答集まで(脳内で)作成していたほどの作戦家っぷりです。さっきと会話の内容が微妙に違いますが気にしないでください。想定問答ですから。
それにしてもこの作戦の立て方、今思い返してみると我ながら腹黒すぎて泣けてきます。

ちなみにこのブログは全部ネタであり、本当のにゃんこむすめは純真無垢な女子中学生であって全然腹黒くなんかないですから安心してください。

 

 

 


……という感じに準備万端整えて。
も集出版への万感の思いを胸に秘めて。
にゃんこむすめは「1.e4」と……慣れないこの初手を指したのでした。

相手は当然ダニッシュだと思いながら、そしてダニッシュなら自分が研究で勝てるとそう確信しつつ 1..e5 と指すはずです。そうに決まっています。さぁ来い 1..e5!前回の対局にて、終盤の入り口でミスって痛い目に会ったリベンジにひそかに燃えて、にゃんこはその獰猛な牙ならぬ可愛い八重歯を覗かせたのでした。あ、そろそろ歯医者行かなくちゃ

ということで、実際の棋譜に入ります。

 1.e4 e6 

 ……これは1.e4に対してあの羽生さんが黒番で得意にしている「フレンチ・ディフェンス」と呼ばれる作戦ですね、えぇえぇえぇ。。。。って。




 1..e5じゃねぇのかよ!!!

マウスを持つにゃんこの右手が、オムロンの低周波治療器で電流を流してるみたいにプルプルと振動を始めたのは言うまでもありません。

戎棋夷説さんが 1..e6を指した瞬間。それは……「Monogusa_Memorial」のために、そして心から尊敬する巨匠のも集のためにと思って練りに練った、どのぐらい練ったかというと卵を入れてから醤油を垂らした納豆をかき混ぜる時のようにニチャニチャニチャニチャと音を立てながらしつこく練りまくった壮大な――――モーツアルトを聴きながら考えていたという意味においては、ある意味モーツアルトの交響曲より荘厳で美しい作戦の全てが無に帰してしまったそれはそれは哀しい瞬間だったのでした。

にゃんこむすめの作戦をあっさり看破してそれを外して見せるとは……。
さすがも集の序文執筆者です。

というわけで予定が狂ってしまいましたので、ここから先は知識と経験だけで何とかするしかありません。ですが、どういうわけかフレンチ・ディフェンス指す人って少ないんですよねー(個人の感想です)。もしかして羽生さんしか指してないんじゃね?

スコッチ・オープニングの予定を思いっきり狂わされたにゃんこむすめの運命は?

次回「も集記念対局自戦記・第2回:降り立ったデンマークのつむじ風」

……は、この記事のビューが500を超えたら書こうかなー(猫目)